惠 一期一会 第30話“不思議な巡り合わせ”(最終回) Shyrock作
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惠からは“四条河原町にある和菓子の老舗”と聞いていただけで、正確な屋号は聞いていませんでした。 尋ねていれば、惠はきっと教えてくれていたでしょう。 でも私は聞きませんでした。 聞かない方がふたりのためには良いと思ったからです。 でも京都までやって来ると、無性に惠の顔が見たくなりました。 (やっぱり屋号ぐらいは聞いておけば良かったなあ……) そこには矛盾した自分がいました。 いくら京都に和菓子屋が多いと言っても“四条河原町にある和菓子の老舗”に限定すれば、そんなに数はないでしょう。 四条河原町を徐行し地元の商人に聞けば、分かるかも知れません。 (でも、もし分かったとして、その後どうするの?) 己を諌める声が脳裏をかすめました。 いや、それより、仮に惠の店が分かったとしても、彼女が店頭に立っている保証はどこにもありません。 店番を店員に任せている可能性だって十分にあります。 3週間前惠との別れ際、彼女の連絡先を聞かなかったことが、今になって悔やまれます。 (もう会ってはいけないことは分かっている……でも、でも、一目でいいから惠に会いたい……)
テーマ : 官能小説・エロノベル
ジャンル : アダルト