行先を確認するまでは、むやみに交差点を曲がる訳にも行かなかったので、四条烏丸の交差点は取り合えず直進し、四条堀川へと向かいました。
道路は相変らずの混雑でのろのろ運転は依然変わりません。
「お客さん、どこに行くのか言ってくれないと困るんですけどねえ」
なかなか行先を告げてくれないお客さんに困り果てた私は、少々つっけんどんな言葉遣いになってしまいました。
「そやねぇ……あぁ、そや、どっか景色のええとこ走ってくれはりますぅ?」
「景色のいいところと言ってもいっぱいあるからねえ・・・具体的にどこか場所を行ってくれませんかねえ」
「うち、あんまりよう知らへんから、運転手はんにお任せしますわぁ」
「う~ん、それじゃ、
嵐山はどうですか?」
「せやなぁ……ほな
嵐山へ行っておくれやす」
私は思いつくがままに、よく知っている京都の景勝地の名前を出すと、女性は案外簡単に了解をしてくれました。
やっと目的地が決まったクルマは西へ向かいました。
(それにしてもこの和服の女性、いったいどうしたと言うのだろうか?何か訳ありのようだが……。)
タクシーに乗車する客はふつう目的地が決まっているものです。
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