知佳の美貌録「電柱を伝い外に 戻れない橋」
先にも述べたようにこの地は火山の名残りで出来た、まことに小さな(径100メートル未満のような)小高い丘群と、それを取り囲む底なし沼とでできていた。
端的に言えば汽水湖に浮かぶ小島(島嶼群)であった。
この沼地は例えば近代にお百姓衆でもこの地の田を耕すのにトラクターは入れない。 かと言って通常の耕うん機かと言えばそれも半ば違う。
テーラーと呼ばれる水に浮くような軽量の耕うん機を入れてさえ、耕うん(耕す・泥をかき回し草をなぎ倒す)と同時に代搔き(均す)までほぼ同時にこなしてしまうほどなのである。
そうやって準備が整った田に、こんどは田舟に躰を預け胸まで水につかりながら田植えをする。
冷たい水は相当躰に堪えた。 もちろん牛馬を使うことなどできないから堆肥など望むべくもない。 すべてその年上流から流れ来る水に交じる肥えと日照りなど自然の摂理任せになる。
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知佳の美貌録「食事はいつも髪結家そろって主を中心に膳を囲む」
娼婦を売り買いするのと違い髪結いはそれなりの人出がいる。
髪結い職人のすべてをどこやらから引き抜いてくるわけにもいかず、女衒は娼婦を集めた時のように彼らを貧農の中から駆り集め、自宅に住まわせ修練に当たらせた。
髪結いというのは多くが師匠と弟子の関係で成り立つような仕組みを作っていた。
仕切っているのは表向きは跡取り息子 (長男は飲み屋の女と同衾してしまったので次男が跡を継いだ) だが実のところ差配はもちろん女衒、武士の時代庄屋と小作がそうであったように上下関係は殊に厳しかった。
任侠道でいうところのスジを立てるのがそれにあたる。
女衒が思い立つような仕事だがこれには深い訳がある。
噂の通り彼らに髪を結わせる傍らで廃りゆく淫売の一旦も担わせたのだ。
旦那と枕芸者の間を摂り持つことは無論だが、奥方を髪結い自身が密かに慰めることはもちろんのこと、どこやらの旦那衆を奥方に紹介するようなこともやった。
だから一般職でありながらその関係は親分子分で、その結束が縄張りとなって他を寄せ付けない、いわゆるショバを作っているからこそ稼ぎ(髪結いを兼ねた淫売)もまま安泰であった。
そのため、なにをするにつけ一家総出で事に当たったのだ。
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知佳の美貌録「髪結い組の食事風景」
娼婦を売り買いするのと違い髪結いはそれなりの人出がいる。
髪結い職人のすべてをどこやらから引き抜いてくるわけにもいかず、女衒は娼婦を集めた時のように彼らを貧農の中から駆り集め、自宅に住まわせ修練に当たらせた。
髪結いというのは多くが師匠と弟子の関係で成り立つような仕組みを作っていた。
仕切っているのは表向きは跡取り息子 (長男は飲み屋の女と同衾してしまったので次男が跡を継いだ) だが実のところ差配はもちろん女衒、武士の時代庄屋と小作がそうであったように上下関係は殊に厳しかった。
任侠道でいうところのスジを立てるのがそれにあたる。
女衒が思い立つような仕事だがこれには深い訳がある。
噂の通り彼らに髪を結わせる傍らで廃りゆく淫売の一旦も担わせたのだ。
旦那と枕芸者の間を摂り持つことは無論だが、奥方を髪結い自身が密かに慰めることはもちろんのこと、どこやらの旦那衆を奥方に紹介するようなこともやった。
だから一般職でありながらその関係は親分子分で、その結束が縄張りとなって他を寄せ付けない、いわゆるショバを作っているからこそ稼ぎ(髪結いを兼ねた淫売)もまま安泰であった。
そのため、なにをするにつけ一家総出で事に当たったのだ。
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知佳の美貌禄「女衒の家に生まれ」
年端もいかぬ女の子が一心不乱に市街地を駆け抜けていく。
小さなその手に文を持たされ脇目も振らず遥か彼方の海の方角を目指し駆け去った。
時は明治。
生家はこの物語の主人公 久美が母から伝え聞いた、その母の記憶にある限り
女衒 (一般的には貧農が娘を質草として女郎を商う置屋、又は揚屋”あげや”ともいう に売る。このこの仲立ちをする男衆のことを言う) を生業 (なりわい) としていた。 という
母の父親である男 (以下 女衒という) は政府非公認の岡場所のあるこの地で髪結いという表向きもっともらしい看板を掲げてはいたが、裏に回ればそも置屋に生娘を世話する売春のための人買いであり皮剝ぎなどを主な生業にし忌み嫌われていた穢多(えた)だった。
穢多(えた)は非人の次に身分が低い。
人も避けて通る河原乞食が何故と思うかもしれないが、需要が無くなった皮剝ぎ様の商売をやめ主人公久美の母が物心ついた時には髪結いの表看板を掲げており食うに困る乞食・・・風には思えなかった。 という
地方で知らぬものとてない潤沢な資金 (女衒と金貸し) に支えられ知名度も高い家柄のように思えたという。 が、久美にこう語る母は今に至っても何故家柄が穢多 (えた) なのかわからないという。
どう卑屈に見ても大陸系でも皮剝ぎでもなく食うに困る河原乞食でもなかったからである。
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