知佳の美貌録「工事の花形 先破」
トンネル掘削機(シールドマシーン)はそれこそNC旋盤のように必要情報を入力してさえやればトンネルの先端(切羽)を自動で掘ってくれ、その岩石や土砂を胴体内に飲み込み、後方へと排出してくれる一方で、掘り進め出来た空洞に自動的に防護壁を設けてくれる画期的な機械だ。
レール上を機関車のように進むこの機械のエンジン排気は巨大なダクトを使い集塵機によって外に排出され、また燃料消費によって酸欠にならないよう常に新鮮な空気を送り込む巨大な送風機が負けず劣らずのダクトで坑内の隅々まで新鮮な、適度な温度と湿度を保った空気を送り届けてくれる。
だから坑内は地面や壁を除いては、さながらオフィスで働くかの如く環境が整えられていた。
こう書くと良いところばかりに思えるこのマシーンには当時はまだ不安定要素がぬぐえないでいた。
テーマ : 官能小説・エロノベル
ジャンル : アダルト
tag : 飯場トンネル掘削硬い岩盤根性と忍耐シールドマシーン不安定要素がぬぐえない人工的な渓流発破技師ダイナマイト目立ち過ぎ
知佳の美貌録「子守が出来ることの嬉しさ」賄いのおばさんが作ってくれたお菓子欲しさに
労務者は手厚い保護のもとにおかれたが、余計な予算を計上しない(女性蔑視、扶養手当・家族手当など義務化無し)など子供たちにとって決して住み心地の良い環境とは言えなかった。
世間から隔絶された世界で追手を欺き住もうと思ったら、もうこういった場所しか無いと考えた末の飯場(はんば)生活であった。
現場責任者のような役目に据えられた学のある幸吉ならいざ知らず、女衒に育てられ労務者の端っくれに加わった好子である。
今掘られているトンネルがダムと農業・生活用水路をつなぐただの水路なのか、それとも高速道路や鉄道のトンネル坑道なのかもわからない。
それほど奥深い山の中で端っくれにとって意味もわからない工事が行われつつある大規模(精神をも圧倒され、訳が分からないほどの規模の)現場である。
今住んでいるところが何処で人々が行きかう街がどの方角にあるかさえも、さっぱり見当がつかないほどの山中の飯場(はんば)で幼稚園や保育園などというものが、この社会にあることさえ知らず久美たち兄弟と母の好子は隠れ過ごした。
ただ隠れなければならないことだけは親を見れば子供心にもわかったという。
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