ここいらに気の利いた養鶏場などありません。 比葡の里だけでは大規模な鶏舎を作っても肝心の消費者が近隣に居ないためどこの家庭でも自前で食べるだけのニワトリしか飼っておらず余剰など無いに等しかったのです。
(なあんだ、人でも取って食おうかというほど悪い人たちかと思えば案外話しの分かる人たちなんだ)
例によって例のごとく早速上がり込んで茶飲み話しに講じました。 久しぶりによく話す人間が現れたからでしょうか出るわ出るわ次から次へとお茶菓子やら漬物・煮物が出てきておまけに話しが一向に尽きないんです。
「センセはええ人じゃあ、なんで今まで来さらんかった」
終いには変な問い詰め方をされたんです。
家屋敷の周りに鶏が放されていると実に可愛らしく、それでいて賑やかで気持ちまで晴れ晴れするんです。
これらの鶏の都合の良い点は農作物にほぼ被害を与えないし
放し飼いができるのです。 確かに産んだ卵を回収するには四六時中鶏が何処をうろついてるか後をついてまらなければなりませんが、それとて成長期の公ちゃんにとって誠に都合の良いことだったのです。
「あの~ この鶏はどれぐらいの値段で分けてもらえるんでしょう」
恐る恐るまず隠居 (えんきょ) の敏江さんに聞きました。
「さあ、どうかねえ~ ウチのヒトが喧嘩鶏にと買って帰ったんですが、思い付きばっかり達者で、今は子供が面倒見てて子供に聞かないことにはねえ」
返事ができないというんです。
「軍鶏は気が強いわりにかかるのが下手で…」
要するに喧嘩っ早くて雌鶏が恐れをなしてしまい上手く交尾ができないということのようなんです。
「隣に聞いて見られた方が…、あそこなら鶏の数も多いしひよこもいっぱいいるから」
ひょっとすると分けてくれるかもしれないというんです。
「あの~ お隣もひょっとしてお子さんが飼っておられるとか…」
そうなると簡単に分けてもらえないかもしれないんです。
「いいえ~ ウチと違ってあそこは
チャボ、それも大方が自分とこで増やした鶏だと言うことだから」
ほぼ雑種でひよこならいくらでも増やせるからただでくれるんじゃないかと言われたんです。
「ありがとうございました。 早速聞いてみます」
お礼もそこそこにお隣に向かいました。 なるほど相当数の
チャボが一羽のリーダー格の雄鶏に連れられて屋敷内を賑やかにうろついているんです。
丁度庭先の小さな畑の手入れをしておられた梅乃さんに聞くと
「ああ、欲しかったら… ちょっと待ってよ」
何やら家の中に入って行って米袋らしきものを持ち出すと
「自分で捕まえてこれに入れて持って帰るんだね」
ぶっきらぼうにこう言われたんです。
事前に隠居 (えんきょ) の敏江さんに雑種云々と聞かされていたのでよく見るとなるほど、雌鶏の中で一羽だけ真っ黒な鶏がいてどうやらそれが純潔と思われ、そう考えてよく見ると雄鶏でも足の長いのと短いのがいて短いのがどうやら純潔のようなのです。
「じゃあこの子たちって言いますかひよこじゃなく若鳥でも大丈夫なんですね」
「そうだねえ、ひよこは母鶏がいないとまだまだ生きていけないからねえ」
虫でも穀物でもまず母鶏がお手本を示し、やらやっとひよこが真似て食べてるんです。
「はあ… なんともはやかわいいったらありゃしませんね、あれじゃ引き離すのはかわいそうだ」
早速その若い鶏を捕まえにかかったんですが、これがなかなか簡単に捕まえさせてはくれません。
「ハハハハハ、無理かねえ、うちの子なら簡単に捕まえるんだが… ちょっと待っとってよ」
そう言うと再び家の中に入り、今度は少量の餌を持ち出してきて庭に撒き始めました。
慣れているせいか餌を掌に乗せ呼ぶと掌の餌であってもついばみに来るんです。
「ああ、これなら簡単ですね~」
堤先生はもう少しで卵を産むであろう雌鶏3羽と群れの中で一番虐げられていた雄鶏1羽の合わせて4羽を貰い受け下薬研 (しもやげん) に持ち帰りました。
「うわあ~ 可愛いい、先生これどうしたんですか?」
「うん、入谷村に出向いて左官屋の梅乃さんに事情をお話ししたらくれるっていうから」
真紀さんちは確か古米が沢山余ってるって言わなかったっけと聞くと
「うん、虫が食ってボロボロのお米なんだけど… そうか鶏にはあれでもごちそうなんだ」
「うん、そうだね。 僕が次に来るとき飼料は買って持ってくるからそれまでの間じゃあ古米で間に合わせておいてよ」
「ありがとう、公子が帰って来てこれ見たらきっと喜ぶと思うよ~」
試しに庭に放すと一時警戒していたもののすぐに慣れ餌を探し始めたんです。
「問題なのは
鶏小屋なんだよねえ、聞けば入谷村でもニワトリ… ああ、白色レグホンっていう大きなニワトリなんだけどね」
鶏小屋の地面に穴を掘って侵入した
イタチにやられて殺される被害が相次いでると梅乃さんがお隣の豊里屋の白色レグホンのことを教えてくれてたんです。
「先生それじゃあ」
「そうそこなんだ、左官屋の梅乃さんの話しではこの
チャボたちのほぼ全てが母屋の隣に建ってた物置小屋の天井の梁に止まって夜を過ごすらしいんだ」
ひよこはお子さんたちが手分けして捕まえていちいち高いところに拵えた鳩小屋のようなものの中に押し込めて夜を越させると聞いてきたんです。
「幸いなことにその左官屋さんの裏手に孟宗が沢山生えててね、必要なだけくれるっていうんだ」
孟宗を使って柱を立て、背の高い小屋を作れば
イタチの来襲を防げるんじゃないかと真紀さんには説明したんです。
「その思い付きはいいけど… 先生小屋なんか建てたことあるの?」
「いや、その、そこなんだよな~」
その日はそこで時間切れになってしまいました。 受け持ちの授業に間に合うよう学校に戻らなくちゃいけないし、その前に真紀さんせっかく逢えたのだから、とにかく必要なことを済ませておかなくちゃならないからでした。
まだ多少歪みが残る背中をマッサージを兼ね整体し、弱った胃腸を整える為お腹を何はさておきさすらねばなりません。
時間をかけてこれらを行うと愛の証としてご褒美に今手入れしたばかりのアソコを舐めさせてもらうんです。 特にこの点については入念に時間をかけ行わせてもらってから学校に向かいました。
帰る途中、須恵乃さんと出逢いましたが受け持ちの授業時間が迫ってる旨断りを入れ一回戦でこの日は我慢してもらったんです。 真紀さん同様使わせていただいたアソコを丁寧に舌を使いきれいにし終え衣服を身に着け学校に向かおうとすると
「今日はなんだか先生うれしそうね、何かあったの?」
歩きながら聞いてくる須恵乃さんに
「うん、今日は入谷村の左官屋さんとこで
チャボを貰い受けたんだ」
うっかりそのことをしゃべってしまったんです。 下薬研 (しもやげん) に関係するものが莞爾さんの許可を得ずして入谷村の人々と交流を持つことは禁じられていたからです。
僕はつくづく教師に向いてないなあとげんなりしつつ学校に帰り着くと
長期に渡って時間休を取り下薬研 (しもやげん) に出向いてたのもですからとうとう学校研修のひとりに加えられてしっまっていました。 断ろうにも末恐ろしくて教頭や校長の前では委縮してしまうんです。
「阿部先生、期間中公ちゃんのこと、お願いします」
「任せといて、ちゃんと手は打ってあるから」
引き留めて上司に難癖付けてくれると思いきや行って来いと励まされてしまいました。 この後別れ際云々も一向に要求して来ないんです。
何のことはない、女同士密約を交わし堤先生を食べるのを女将を含む3人での順番制にされてたんです。
「いいこと須恵乃さん、本来なら彼は……」
「わかってます。 真紀さんの愛おしい人っておっしゃりたいんでしょ? ウチだって愛おしいには違いないけど生活費の面倒まで見てもらってるんだから送り迎えなんかへっちゃらよ」
それより見てないところで掟破りは無しにして頂戴と釘を刺されていたんです。
夜ともなると決まって学校の体育館に忍び込み阿部先生は堤先生に騎乗し搾り取り、明けて朝になると今度は朝勃ちのマ〇に女将が擦り寄り物陰でしゃぶってその気にさせ立ちバックが始まるんです。
「…ったく、先生ったら人がいいんだから、ホントなら先生こそ毎朝生卵でも飲んでなきゃ持たないのに」
ぶつくさ言いながら、それでも公子ちゃんに連れられ先生不在の間須恵乃さん、長距離散歩をさせられました。
一週間に及ぶ研修から帰ってきた先生がまず驚いたのは加藤家に立派な
鶏小屋が出来てたことでした。
「これどうやって、誰が作ったんですか?」
「ねえ、凄いでしょ」
あの後須恵乃さん、かつてお世話になったことのある左官屋さんに出向き梅乃さんにお願いしてご主人の正平さんに手伝ってもらい、そこに加納莞爾さんも加わって背の高い炭焼き小屋風の
鶏小屋を建てたというんです。
「それじゃあお礼を持って窺わないと」
「それは心配ないわ。 須恵乃さん、先方さんにあなたが沢山持ってきてくれたらしい砂糖を手渡してたから」
「でも砂糖程度では、
チャボまでもらっておきながら…」
「あなたにとって砂糖なんか大したものじゃないかもしれない。 でもね、この村じゃまだまだ砂糖は高根の花なのよ」
骨組みは確かに左官屋の正平さんと莞爾さんが建てたかもしれないけど屋根葺きは須恵乃さんが行ったというんです。
「須恵乃さんにそんな技があったんだ」
「さあ、それは知らないけど須恵乃さん結構楽しそうに屋根葺きや壁葺きしてたわよ」
女が漢によって目的を定められると、ああまで幸せと感じられるんだと
恨みがましい目で睨まれ、先生こそこそと何処かへ出かけて行ってしまったんです。
でも実際育ててみるとそこから先が大変でした。 時間とともに何やら鶏のひ弱そうなやつからモノを食べなくなったんです。 如何にも寒そうに毛を逆立て丸まって目を閉じ動かなくなってしまったんです。
「せっかく分けてもらった鶏なんですが丸まって動かなくなって餌も食べようとしないんです」
左官屋に出向いてこう申し述べると
砂遊びができる場所を確保してやることと病気になった鶏には鼻腔にペニシリンを塗り込んでやると元気になると、なんと梅乃さんの息子さんから懇切丁寧に聞かされたんです。
少量のペニシリンを分けてもらい、とりあえず塗ってやってその足で里に出向き石灰を購入して帰ってきたそうなんです。
「本当ならきれいな砂を用意してあげるのが良いそうだが、無いときは土に石灰を入れておいてやるんだそうだ」
「そう… 貧乏して畑に石灰も入れられなかったから… じゃあ鶏がうんと遊んだ土は畑にもいいんだ」
「どうやらそのようだね、飼料にいろんなものが混じってるからなお良いらしいよ」
それからというもの加藤家の屋敷うちは毎度掃き清めたようにきれいに鶏が掃除して回ってくれるようになったんです。 家に入り込む虫もまったく目にすることさえなくなりました。
この
チャボの導入は下薬研 (しもやげん) にいろんな効果をもたらしてくれました。
「昨日お返しにと梅乃さん、卵を持ってきてくれたんですよ」
「ああそれはきっと飼料のお返しだよ」
「えっ 資料のお返しって、あなたまさかウチだけじゃなく…」
「うん、あそこだって飼料買うの大変そうだったから一袋買って届けておいたんだ」
「だからだわ、隠居 (えんきょ) の彰って子の言伝だって、欲しかったら軍鶏の雄鶏1羽あげるんだって」
種付けには不向きかもしれないけど、その代わり見張りにはこれほど頼りになる鶏はいないそうだと聞かされていたんです。
「そうか… 軍鶏がいたら
イタチもカラスも、もちろん鷹だって来なくなるかもね」
「朝になるとうるさくて仕方ないけど」
真紀さん、雄鶏ってまるであなたと同じだと明るく笑ってくれたんです。
良いことはほかにもありました。 閉塞感にさいなまされ動こうとしなかった莞爾さんをたきつけ須恵乃さん、釣りをやらせたんです。
ドロバエと呼ばれるアブラハヤやハエと呼ばれるカワムツが沢山釣れるためこれを天婦羅にしたり佃煮にしようと言い始めたんです。 天婦羅にできない腹綿の部分は鶏に与えることができるからでした。 須恵乃さんもかくいう川ニナをとってきて湯がいてお酒につまみにと莞爾さんに渡してくれたんです。
釣果によって結果が変わってきますし鬱の人にとって気晴らしにもなります。 夫婦揃って楽しめて、しかも美味しい天婦羅も先生が持ち込んでくれる小麦粉や菜種油あればこその食材だったんです。
それに何と言っても真紀さんを元気づけたのは先生のチ〇ポでした。 この頃では真紀さん、マッサージや整体、お腹擦りが終わった後のご褒美の舐めに耐えきれず上に乗っかってチ〇ポを咥え始めたんです。 時には須恵乃さんに奪われたくなく先走りを啜り上げシズクを飲むときもありました。
押さえ込まれおっぱいを吸われ始めたことから一歩一歩着実にあの中山ヶ原で交わしたふたりにとっての初体験の感覚が蘇りつつあったんです。
「お母ちゃん、またそわそわしてる」
公子ちゃんの言う通り、この頃では先生の姿が見えないとそこいらを行ったり来たりし、心ここにあらずとなり始めたんです。
- 関連記事
-