知佳の美貌録「奇跡の生還」
今夏、海水浴に連れて行ったはずの2歳の子供が行方不明というニュースが流れた。
それと同じようなことが久美の家族にも過去に起こったことがある。
弟がまだ
3歳になったばかりの頃、母に連れられて朝から
電車を乗り継ぎ買い物に出かけた。
電車で駅をいくつも通り過ぎ、何度か乗り換えて出かけた。
久美には向かった先が何処なのかさっぱりわからなかった。
何を買いたかったのか、何故そんなに遠くまで出かけなければならなかったのかなどについては知らない。
母の好子は勝手気ままな性格だ。
思いつけば何処まででもひょいひょいと出かけるような人だった。
第一、久美を買い物に連れ出す必要性などどこにもなかった。
だのに、ふたりの子供を連れて好子は出かけた。
その子供たちについても、自らは気付いていないが、久美と弟を比較すると極端な好き嫌いがあった。
普段から何処へ行くにも弟の手を取って出かけはしたが、久美が自分も一緒に行きたいと告げると怒られ、手を繋ぎたくて差し出すと、邪険に振り払うような母だった。
小学校にまだ上がっていない久美に、家事は何でも押し付けたが、弟には台所に立たせるなどということは絶対させないほど可愛がる度合いは偏っていた。
その母に、何故なのか今もって不明だが、ともに連れられ出かけた先の
デパートで、弟は
迷子になった。
外の風に当たると、好子はことさらに男衆に目を輝かせてしまう悪い癖がある。
あろうことか混雑する
デパートの中で、このことによってついつい弟の手を放し、勝手気ままにふらふらと彷徨い始めた。
目的が買い物だったはずが、いつのまにか買い物ではなくなっていたように久美には思えた。
久美は懸命に母の後を追った。だが、手を放され置いて行かれた弟はいつの間にか行方不明になった。
久美は弟の姿を見失ったことを何度も好子に告げるが、好子は好子でそれどころじゃないと言った風に険しい顔つきで先を急ぎ、ことさらに注進の久美を邪険にあしらった。
やがて行き着いた先で我に返って、自分のしでかしたことは棚に上げ、久美を詰った。
弟を群集の中で見失ってしまっているが、そうかと言って自分の足で探すような性格の好子ではない。
好子は
デパートの事務所に取って返した。
あなたたちが悪いんだと言わんばかりに
デパートや警察を動員して探し回らせたが、とうとう陽が暮れゆくころまで見つからなかった。
警察の説得に応じ、暮れゆく街を家路に向かった。
帰り着いてみると庭先で弟は遊んでいた。
変なところに連れて行かれるような気がして、行きがけから乗り換えの
駅名を全て記憶し、手を放され置いて行かれた瞬間に逆コースを
自分一人で引き返して帰ってきたと言った。
久美は物心ついた時から母を信用していなかったが、大切に育てられたはずの弟は、それ以上に冷徹に母の好子を見つめていたことになる。
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