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知佳の美貌録「貢物」 連れ込まれた墓場の謎

知佳の美貌録「貢物」

始めの頃こそ哀れみや、正義感にも似た気持ちで彼をかばった。

生まれや育ちこそ違えど、置かれている立場に、話を進めれば進めるほど、聞けば聞くほど違いはないような気持ちになった。

代々議員という家系を守るため、跡取りとして実家に据え置かれ、家を出て都会で就職もままならず、さりとて稼げる場所もない。

そんな夫を小ばかにして「嫁に来てやったんだ」とばかりに勝手気ままに遊び歩く妻に手を上げられないボイラーマン。

過疎の村にあって、正規雇用という確固たるものが欲しかった。

それ以上に、遊び歩き、男に不自由しない妻の、奔放な性に苛立ちを感じ始めていた。

男盛りとしての、他の男たちに、懸命に収入を求め議員としての地盤を求めて汲々とする傍らで妻を寝取られたかもしれないという疑惑から沸き起こる、見せつけられ耐えなければならない性欲を抑えられなくなっていた。

久美は、その暴発しそうになる性欲を、妻とは比べ物にならない若い身体で受け入れてくれるかもしれない夢のような存在となった。 が、

そこに、支配人というライバルが現れ、いやが上にも「妻を寝取られた」思いがこみ上げ、今度こそ寝取られまいと牡としての欲望が増した。

なんとしてでも久美の身体に、我こそ先に自信を埋め込み、中を探し芯部を突きに突いて屈服させるまで逝かせてみたいと思った。

情けない話だが、支配人や経営者から解雇宣告されて窮地に立たされた時、降ってわいたように久美が現れ救ってくれた。

そして何度も地下室に通いつめ、肌を寄せてくれていた。

生活問題で家庭訪問し、その家の主婦を肉体関係になる寸前まで掻き口説いた経験を持つ。

運悪くその主婦はそうなる寸前に命を絶った。

だが、感触は今も覚えていた。

議員として、最も得意な相談役としての、あの時使った技術を試しに駆使してみた。

あっさりと女は堕ちた。

恐る恐る誘い、女の気持ちを確かめ、確実というところまで轍を踏んでからホテルに連れ込んだ。 つもりだった。

両者納得の上で関係を持った。  つもりだった。 町議にとっての対面上女の合意は必須条件だった。

そしてそれは、町民らが日頃のお礼に手渡してくれる農作物の横流しという棚ぼた式の形で実ったのである。

「家内を寝取ったやつらに比べ、安く上がった」

もちろん、ホテル代も高くついたのだが・・・

議員はしてやったりと思ったし、犯された久美にとっても思わぬ収穫だった。

「こんなことまでしてもらった」

恋愛は男女平等だと思っていたのに、一方的に男が貢いでくれる。

ホテルの地下室で、恋人に近い間柄になろうと努力中に逝かされてしまっているという羞恥で、消え入りたいと何度思ったことかしれないのに、

その、どうしようもなくなったアソコを諫める為抱いてもらえることに対し、相手が貢物を差し出してくれたことは意外だった。

( あたしのアソコを使って性欲処理したくて仕方なかった。挿し込むかわりに何かを差し出さなければ、男として成り立たないんだ。支配人に負けたくないんだ )

母の生きざまを見ていれば分かっていたはずなのに、久美にとってこんなことが意外に思えた。

「母が当時の男によくやった。そうだ!拒否すると、きっともっと貰える」

その、勝ち誇ったような気持ち。それが次第に彼が手渡してくれる貢物目的だけに変わったのは、忌まわしい過去を思い出させた、その今も続く生活苦からだった。

食べ物すら買うに買えない貧乏暮らし。

夫の給料日近くになると決まって借金取りに追われた。

子供を捨てて男のもとへ走った母。

それなのに、勝手にサラ金業者から男に貢ぐ金を引き出し、その連帯保証人に久美の名前を使われてしまっている。

督促状が舞い込み、深夜になると業界から電話がかかる。

「あれは母が勝手にやったこと」それを証明したくても、証拠になる手がかりすらつかめなかった。

第一、母が何処で、どんな男と暮らしているかさえわからない。

母を追い詰め、一緒に暮らす男を脅し、金を巻き上げてきた父すら、奔放な母の居所を見失っていた。

目の前で妻を寝取っている、その現場を突き止め脅す。

だが、それすら叶わなくなっていた。

置き去りにされ、夢を断ち切られて、ますます酒に溺れ賭け事にはまる父。

その父が、事あるごとに久美に金の工面を集った。

催促は、決まって家族が揃った夜、近所中に聞こえるほど大声で怒鳴りながら乗り込んでこられた。

そんな父を玄関から追い出し、

手元にある、精いっぱいのお金を手渡し、追い返す日々。

夫は見て見ぬふりをしたが、翌日実家に行って、何もかも告げ口し義母の口を通じ久美を憤らせた。

「息子は騙された。騙されて子供を作らされた。エライ家族がいたもんだよ、まったく」

やれ お小遣いが少ないだの、食事を与えないだのと、訊くに聞かれぬ悪態を、しかも実家に呼び出されて子供たちの前で、頭を下げさせられ延々と言われた。

あんたの息子は生活費を稼ぐ能力なんかないと言ってやりたかった。 せめて言い返せる生活費が欲しかった。

ボイラーマンは、その生活費を、自身もお金に困っているというのに、小出しに預貯金を崩し出してくれた。

手渡され、受け取るとその手を引いて組み敷き、半ば強引に太腿を割った。

悲しいことに、挿し込まれる頃になると、決まって久美が負けた。

押し殺そうと必死になればなるほど声が漏れ、気を良くした男はその、声を出し始めた部分がポイントと知って責める。

やがて男は耐えきれなくなって果てるが、火が点いてしまった久美は次を求めた。

男が色めきだった。

ほっておいたら、支配人に処理してもらおうとするとでも思ったようだ。

実際久美は、それほどに欲しがった。

幼いころから、目の前で母がこれ見よがしに見せつけた男との逢瀬・淫行。

欲情が募ると極端に食が細り、眼を引きつらせありったけの化粧を施して見栄えを好くし出かけていく母。

行先は見当がついた。 男を見つけ、火を消してもらいたくて出かけていた。

一旦出かけると、気が済むまで男に抱いてもらうのが母のやり方だった。

それとわかるほどに上気し帰ってきた時など、父との間で喧嘩になった。

母は父に、普段と違う酒を「何をそんなに妬いてるの?」と妖しげな笑みを浮かべながらふるまった。

情けないことに父は酔うと気が大きくなり機嫌がよくなる。

だが、酒浸りの父の身体で母を納得させることはできなかったのだろう。

一度味をしめると、父が目を光らせているというのに、母は目の色を変えて男のもとに通い詰めた。

泊りがけで出かけ、帰ってきた時の羽振りは妙に良かった。

たんと晩酌が出てくる。

姉弟は久しぶりでおいしい食べ物にあり付けた。

オンナ・欲が金に代わる。

それが生活費に代わっていたことは、幼心にも知っていた。

忌まわしく思えてならなかったそのことが、今になって自分の身に降りかかろうとは思わなかった。

第一、自分の身体をそれほどまでして欲しがる男は、母の相手をするやさぐれ男はともあれ見たことがなかった。

何の感情もわかないといった様子で、時折入ってくる夫は、それ自体酒と煙草の合間に済ませるというようなやり方、愛情など感じたこともなかった。

そんな夫からも、支配人からも奪い取ろうと ボイラーマンは必死になって屁理屈をこね貢ぎ、なだめすかして逝かせきり、久美が限界と見て取るや見送りの途中で割り入ってくれた。

時間がたつほどに、久美の中の何かが揺れた。

生まれて初めて、男が欲しくて、職場内と知りながら男に詰め寄って困らせた。

腕や指といったセックスとはいいがたいものであったが、久美の肉体はこんなものにも応じ始めていた。

そしてそれは声となって、身をよじって発せられ、議員を困らせた。

歳の差は一回り以上もある。

妻の不純行為を散々見せつけられていた40年配の男にとって、若い久美の肉体は耐えられない欲望を吐き出させてくれた。

〈 女房は、こんなんなって男に狂いまわり、挿し貫かれ悶え苦しむんだ。女ってやつは許せん!! 〉

妻と、寝取った男たちへの邪心も手伝った。

小ぶりで色つきの良いアソコが、甘酸っぱい香りを放ち、ヒクヒクしながら濡れそぼる。

すると、押し殺すようにして身悶え、男の侵入を促そうとする。

それを賢者のように振る舞ってなだめた。

反り返る屹立。

久美が見せつけてくれるソコに、我慢できなくなって放出してしまうこともまれにあった。

ところがそれを見た久美は、ここが責めどころとばかりに下着を着けずに階段を降りてきた。

見上げるボイラーマン目に、眩しいほどのアソコが・・・、

それで決意した。

散々訊かされた家庭の事情、それを考慮して久美にとって少し贅沢と思える貢物をした。

たかだか野菜だが・・・

だから久美は、黙って脇道に反れるボイラーマンに付き従った。

( きっとこの奥の空き地で・・・ )

割り入る気だと久美は思っていた。



最初の頃こそ、ボイラーマンはホテルを利用してくれたが、預貯金が底をつくと、再び行為は屋外に代わった。

刺激が強い代わりに、人前にアソコが結合される瞬間を晒すことになる。

不思議なもので、どのようにして嗅ぎつけたのか、行くところ行くところ覗きがついてきた。

車を走らせながら場所を探すしかなかったにもかかわらず、必ずと言っていいほど覗かれた。

分かっているのに、それでも隠しながら屋外で行為した。

最後の瞬間の、あの「観ているやつを前にして、この女を独占している」刺激がボイラーマンにはたまらなくなっていた。

明らかに、妻を寝取るような奴らの目の前で、若い人妻を寝取っている。

挿し込みが始まると、決まって脳裏に妻が男に組み敷かれアソコに野太いものを突っ込まれ惑乱する姿が浮かんだ。

血相を変えた男の屹立は逞しかった。

もうこの頃になると、貢物もそうだが彼の身体が恋しくてたまらなくなっていた。

それと同時にボイラーマンの性癖もわかってきた。

遊び歩くというボイラーマンの妻が、わざわざ職場を訪ねてきて久美をねめつけてから帰っていった。

自分が先に遊んでおきながら、夫がほかの女に入れ込んでいることが気に食わないんだ。

それならあんな女にびた一文差し出す必要はない。

もっと搾り取ってやる。

「観られてると思うと、気が散って・・・」 ある日こう久美は言ってみた。

〈 欲しがってるのは、あたしの方じゃない。あんたこそ女房の浮気に耐えられなくて女を欲しがるんでしょう? 〉

そい言いたかった。

その日からしばらく、ボイラーマンは抱こうとしなかった。

右往左往した。

どこもかしこも、もう何度となく使った場所だった。

「覗き見されるかもしれない」

久美に嫌われたくなかった。

中年の男が若い人妻を手籠めにする快感。

今となっては古女房よりもそれを失いたくなかった。

我慢しようとすればするほど、右手を使っての自己処理の回数が増えた。

むなしさと、焦りが増していった。

「久美のヤツ、絶対に逝かせた筈だが、ひょっとして逝かせ切れていなかったかもしれない」

確かめたくて、仕方がなかった。

日が増すにしたがって、欲しい気持ちを抑えられなくなっていった。

言葉や行動の端端に、それが現れるようになる。

そしてとうとう見つけた場所、墓場の奥に分け入った。

「アラッ、こんな素敵な場所 知ってたの?」

小さな池を囲んで墓石群が並ぶ。

春は池の周囲に植えられた桜が、それは見事な花をつけ、さぞや美しい眺めだろうと思った。

夏が近いこの時期は、水辺の土手の車のライトに照らされて青々と夏草が茂っていた。

その墓場の、一番奥まったところに車を乗り付けた。

鼻をつままれてもわからないほどの漆黒が辺りを包む墓場の奥に車を乗り入れ、久しぶりに絡まった。

お互い、一直線にアソコをまさぐった。

久美が助手席から手を伸ばし、運転席の彼のジッパーを引き下ろすと、元気よく屹立が飛び出してきた。

「我慢してたんだ・・・ごめんなさい」

「久美ちゃんだって、ホラッ もうこんなに濡れてる・・・」

熱っぽい舌が絡まった。

お互いの衣服を脱がせることに神経が集中していた。

「急がないと、出ちゃうね、こんなんだもん」

それは久美からのOKサインだった。

墓場だからと安心したこともあって、ボイラーマンも警戒心を解いて久美に挑んだ。

指での刺激も、舌での刺激も十分に堪能し、結合というときになって窓越しに覗き込む男の姿に気づいた。

久美の脚を十分に開き、指や舌で逝く姿を覗き見の男に、しっかり見せつけてしまっていた後だった。

ベットリと助手席の窓に付着した覗き見の男の汗とも唾液ともとれる薄汚い物質。

顔全体がへばりついていた。

久美にして、これほどの恐怖を味わったことはなかった。

墓場の中、ただでさえ窮屈な車内での体勢。

追い払おうにも久美のアソコをボイラーマンの腰で隠すのが精一杯で、動けない。

屹立は久美のアソコに挿し込まれることなく萎んでしまっていた。

半べそになった。

「観られてたじゃない!どうして!? この場所、どうして知ったの?」

久美は問い詰めた。

逃げ場がないと知った町議は、仕方なく経緯を話し始めた。

この場所こそ、あの相談役に回り身体の関係を持つ寸前にまでなった、その人の夫が眠る墓がある場所だといった。

その女の夫がまだ生きていたころから相談役として人妻のもとを訪れ、相談と称して肌をまさぐり合っていたという。

亡くなるころには、すっかりその人妻は町議に身を任せきっていたという。

だから墓参も一緒に出掛けた。

葬儀のあった日から、人妻の家にたびたび近所の人たちが来るようになり、逢瀬に難儀した。

そこで、出会う場所を墓場に変えたという。

何度もその人と墓に通いつめ、奥まったその場所で深い関係を持つ寸前にまでなってしまったと告白された。

「勘違いしないでくれ、あの時は女のほうから関係を求められたんだが、何とか逃れて・・・」

亡くなった元夫の墓石の前で、その妻を掻き抱く。

罪悪感と欲望がないまぜになり、久しく男の身体から遠ざかり、不自由していたこともあって妻は燃えてくれたという。

その夜は人妻が何時になく燃え上がり、ついにアソコを差し出してきて、屹立をそっと摘ままれ自らあてがわれたという。

腰を突き出せば、一気に根元まで埋め込める状態にまでなってしまっていた。

だが、最後の瞬間 中に挿し込む勇気が出ず、入り口で右往左往させてしまった挙句断念した。

男と女の醸し出す異臭があたりに立ち込め、一触即発になったが町議は、そのことで我に返ってしまった。

「罰当たりめが!!」 どこからかそう聞こえたような気がして怖気を振るった。

本気で男にアソコを晒し、受け入れ態勢に入っていた女は捨てられたと勘違いした。

妻の座に座れると思って差し出し続けたのに、夫の墓の目の前で嬲られ捨てられた。

振られた腹いせに、女は自殺したと言った。

〈 純愛じゃない。所詮男と女の欲望だけの世界なんだ 〉

このことがあってからというもの、ボイラーマンはやっとボイラー室での情事を解禁してくれた。


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