異性の思考をやんわりと受け止める努力、その結婚願望を逆に取られる悲しさ
知佳が高校卒業して間もなく、医学生の彼に出会った。
そこ頃は盗んだバイクを乗り回すなど、平気でしてたヤンだった。
何度も警察にご厄介になった。
そんな知佳をやんわり忠告してくれたのが医大生だった後追いすることになる彼。
知佳とはまるで別世界の人間、
頭が切れるし、どんな非礼な言葉を浴びせても素直に聞き流してくれた。
暇さえあれば族仲間と集会を開き、行き着いた先で誰彼構わず身体の関係を持った。
職場と同じような雰囲気だと当時は思っていた。
リーダーのオンナという立場と、心の中では理解していたからこそだったが、他の男と集会中絡んでも恋愛感情はご法度だった。
その彼らに隠れて、医大生の彼と出会った。
族のリーダーはもとより、仲間にもひた隠しに隠して彼の後を追いかけまわし始めていた。
理知的の物事を解決しようとする彼、
彼にとって理想の女でいようとひたすら従った。
彼に下宿に通いつめ、懸命に身の回りの世話をし、その甲斐あってひとつになれた。
彼が研修を終え、郷里に帰ると言い出したので家出し、当てもないのについていったバカな知佳。
自分がヤンであるということなど、舞い上がってしまってすっかり忘れていた。
別々の列車で彼の郷里に向かったっていうより、本当は捨てられていることに気づかず、知佳が勝手に彼の後を追ったんだが・・・
郷里に帰り着いた彼は、当然知佳を「都合が悪い」と捨てた。
知佳がそばにいるだけで職場や家族に迷惑がかかるからというのが理由だった。
捨てられて初めて正気に返り気づいたこと、宿無し・金無しということ。
手元に残ったお金では食事代もままならず、スカウトされるまま夜の街に身を沈めた。
衣食住が揃った環境に置いてもらった。
幸いなことに知佳はご覧いただいた通りのオトコ好み(笑)、おまけに族の仲間や別れたばかりの彼で知り尽くしてたから、客のオサワリ要求は容易に理解でき、店では貢献できたと思う。
お客さんは高いお金払って、知佳をオサワリに来る。
男の性欲って不便なもの、そう気軽に考えていた。
そんなふしだらな生活を続けていても余裕ができると彼を再び追っていた。
彼の近くを離れがたくて、暇さえあれば出かけていって彼の動向を見張ってた時期だった。
何日も、何か月も経つうちに彼が職業のため、実家のため、本気で縁切りたいと願っていることが分かってやっと街を離れる決心みたいな気持ちになり、ついでに仕事も母と同じ介護を選んだ。
若かったから、男の要求が汚らしく映ったのかもしれない。
それで潔癖な介護を選んだつもりだった。
介護、入居者さんの顔色を窺い、その人たちの気持ちに沿った会話を交わす。
最初の頃こそうまくいった。
風俗まがいの店に出入りしていたことで、異性の思考をやんわりと受け止める術を、それとなく繰り出せた。
人気が、入居者さんばかりじゃなく、同僚の男性群からも高まった。
雇い入れてくれた女事務長の険悪な顔色にも気づかず、連日男達に向かってシナを作り愛想を振りまいた。
「姐御」と呼ばれるようになっていった。
そのうち、同じ施設内で同じ境遇に育った仲間が出来た。
共に家庭向きとは思えないタイプ。
愛想は振りまくし、調理も得意、掃除もこまめにするが、何処かが違うタイプ。
彼女も知佳と同じように煙草が切れると落ち着かないタイプ。
自然、誘い合って灰皿を前にして休憩するようになり、どちらからともなく男の話で盛り上がっていった。
彼女は典型的な自己中心タイプと この時知った。
欲しくなると男を呼び出し、まっしぐらにホテルに向かうんだと云った。
遮二無二抱かせ、湧き起り抑えきれなくなった欲望を満たすんだと。
ふたりの子供がいるバツイチなのに、言うことが堂々としてた。
子育てと夫婦生活が両立できなくて別れたという豪快な女性だった。
だから男との将来は望まないし、男がその都度代わっても一向に頓着しないと云った。
知佳は違う。
その点では女々しかった。
豪快な彼女の相手が結構真面目な男だというのに、知佳の相手は何故か隠れ既婚者ばかり。
それでも結婚願望は常について回った。
男の誘い方も、相手の会話に合わせ、理解を示しHに持っていくように心がけた。
ところが男は、将来となるとHではなくきれいごとを並べ立てるデートに知佳を誘ってくる。
手がふれるか触れないかの瀬戸際を彷徨うっていうのは、男ならともかく女には とにかくつらい。
何かの折、妄想に駆り立てられた時だけ性欲が沸き起こる男と違って、
オンナは時期が来れば勝手に性欲が沸き起こり、
自身で止めることが出来なくなる。
風俗に勤めたことで欲情が沸き起こるべく年齢が早まっていたようだった。
変な気持ちになった時、鏡に映して診ると触りもしないのにぱっくりとワレ始めてしまっていることもあった。
知佳だって生身のオンナと否が応でも自覚させられる。
シタクテ狂いそうになる時もある。
風俗の、たとえ客相手でも、
Hしてもらった翌朝は爽快だが、できなかった翌朝は最悪。
身体がダル重い。
出しちゃいけいない職場での愚痴やヤン言葉が口を突いて出てしまう。
「軽々しく口車に乗ってデートしたら、遊びに利用されるだけだよ」
職場の彼女が忠告してくれるが、もう聞く耳なんか持てなかった。
日頃、なめてかかってた男の声をかけられた。
将来なんか考えられない男からの誘い。
誘いの仁手上げた・・・というより乗らざるを得なかった。
虎視眈々なのか、お決まりのデートコースを回らされた。
会話の流れも、遠回しに将来の夢みたいなどうでもよい内容。
もう限界って時になって座敷でと、
これが幸い、靴を脱ぐフリしてるように見えたかもしれない・・・
先の坐した彼の視線の先が熱く一点に注がれた。
どうしても我慢できないっていうとき、デート先でチラッと魅せてあげた・・・そんな感じになってしまっていた。
会話の流れがそれで変わった。
次第に本性を現すような卑猥な言葉を耳元で囁かれる。
異性の思考をやんわりと受け止める努力を、この時も怠りなくやった。
どこで道が逸れたのか・・・
長い長い遠回り。
それほどまでして得た相手なのに、魅せたことで都合の良い女に思われてしまった。
男の性って厄介!!
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テーマ : 元ヤン知佳のイケイケ介護日記
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