【シェアハウスのように】指令その1 妻の浮気の証拠を掴め!第二話
長瀬をリーダーとするグループは艶子の月のリズムをつかみつつありました。
性欲の満ち欠け、湧き起る時期と治まる時期、その周期です。
夫や子供に悪態をつかれながらも家に閉じこもっているようなときが欠けとするなら、
運転手の横山にちょっかいを出すころは恐らく満ちじゃないかと長瀬。
そして正に今がその満ち始めた時期のようでした。
横山に目的地近くまで送らせておいて、車を乗り捨てると猫のようにビルからビルへ裏道をすり抜けていく。
その都度けむに巻かれ尾行は失敗した。
横山が運転する車が着く場所のビルには必ず手引する男たちが先回りしていて尾行を始める、するとそのひとつの部屋に艶子は消えてしまう。
消えたが最後、待てど暮らせどもう入った場所から出てこないんです。
尾行を撒けたことを確認すると、裏口から抜け出し小さないくつもの路地を通り抜け男と出会っていたんでしょう。
商業都市と言ってもマンションなども肩を並べて建っており、そのうちのひとつに潜り込まれてしまえば、治外法権でもう探しようがなかったんです。
艶子はいつもこの手を使い長瀬グループを煙に巻いていました。
長瀬たちは先を読み、目星をつけたマンションに先回りして待っていましたが、艶子はそんな日に限って姿を現さなかったんです。
そればかりか深夜になっても自宅に帰ってこなかったんです。
ある日のこと、横山の車を降りた艶子は人ごみに紛れいつもとは逆のビルに入りました。
滅多なことで手を貸せと頼まなかった男が勤めている会社が入っているオフィスビル。
艶子が潜り込んだその日、間男は艶子のためにある場所で待ってくれているはずでした。
ビルの裏口、と言っても非常口ですが、
その脇にある小部屋。
昼間は用の無い夜警の控室で一見何の変哲もない部屋に見え、壁にはびっしり防災器具が備え付けてあったんです。
警備員は夜間、この部屋で仮眠を取りながら一夜を明かすんですが、
そのため常に仮眠が取れるよう寝具も用意してあったんです。
男が艶子に隠れて待てと言ったのはこの部屋のことでした。
艶子は教えられた通りこの防災センター室に入って時を稼ぎながら男の到着を待っていたんです。
夜警に使うだけの部屋であり防災に使うだけとあって、窓はあっても外部から見えないよう目隠しされていたんです。
従って昼間でも部屋の中は薄暗いんですね。
4畳半のその部屋には押入れがあって使った布団は仕舞うのが決まりになっていたんですが面倒くさいらしく万年床が常だったんです。 いつでも気軽に横になれるようにです。
艶子は寝床の中に寝っ転がるようにして潜んでいるのはてっきり待ち合わせの男だとばかり思って、ろくに警戒もせずに布団の脇に横すわりになりました。
部屋に入った時、余程話しかけようとも思ったのですが部屋の外は通路になっていて話し声が聞こえてはとやめたんです。
部屋に入って程なく、布団を頭からかぶったままの男が艶子にちょっかいを出してきたんですね。
かくまったお礼が今すぐ欲しかったのか腰のあたりをまさぐり始めたと思ったら衣服を捲り始め、
艶子も月の満ち時がきており兎に角男が恋しかったので手で払いのけたりしましたが完全に拒否しきれませんでした。
罵声を浴びせられると気構えていた男は艶子の態度に驚きました。
そして、よくある女のOKの合図だと勘違いしてしまいました。
魅せるだけなら、触らせるだけならと時に邪険に振り払いながらも警戒を緩めていった艶子。
オンナの身体には多少の心得があるらしくオトコによって艶子の月は満ちはじめるどころか満月に導かれ始めていたんです。
スカートを捲ることには拒否し続けたのにその先へのことは動きが止まってしまったんです。
艶子の膝あたりに男は足をこじ入れました。
そうしておいて開いてしまった奥の部分を指先が這い始めたんです。
艶子の手が男の手を上から押さえつけと動きを止めようとしたときには指はとっくに大事な部分の入り口を突破し艶子を忘我の果てに追い立て翻弄させてしまっていました。
辛うじてオトコの意のままにOKを出さなかったのは、これから出会う約束を交わしていた男に今日の操を差し出すためだった。
布団で顔を隠したまま太腿を割ってのしかかろうとする男を別の場所で待たせている男のために押しとどめねばならなかったんですね。
艶子の腰には熱く滾ってしまった男のアソコが触れて先をせかしていた。
くぐもった声が艶子の口から洩れ、攻防は佳境に差し掛かっていました。
男の唇が艶子のそれを塞がなかったらどうなっているかわかりませんでした。
物音を聞きつけた女子社員が不信がって部屋を覗き込んだからです。
この部屋は時にオフィス内でよく社内恋愛に使われていましたから明けた瞬間儒教を理解し慌てて部屋を閉め「ごめんなさい」と言い残して立ち去ってしまったんです。
小さな布団にふたり一緒に潜り込んでいたところを若い女の子に見られたことから艶子の心に火が点きました。
完全に絡み合っていったところを観られてしまったと思ったんですね。
微熱が出始めていました。
他の女に打ち勝つほど男は狂って私を抱きにかかっている、そう思うと濡れてしまっていました。
とはいうものの誘いをかけたのはむしろ艶子の方だったし、十分潤わせてもらっていたんですが・・・
表がまだ騒がしい以上、このまま静かにこの場所で男と過ごす以外なかった艶子。
そうでもしなければ、もしも先ほどのような事務員と同じビルでこの時間帯に顔を合わそうものならば余計怪しまれると思ったんですね。
急いでこの部屋を抜け出さなければ夕方になって警備員が来てしまいます。
かといって慌てて出ればうわさを聞き駆けつけた女性群に見つかってしまいます。
その時頭にひらめいたのは、この場所が時々不倫者同士の逢瀬に使われるということでした。
警備員は状況をよみ、どこかで自分たちが出ていくのを待ってくれていると思うことにしました。
艶子たちが防災センターを抜け出したのは明け方になってからでした。
床の周りに汚れを拭きとったティッシュをまき散らしたままです。
艶子こそ布切れが最後まで足首に引っかかっていたから、
待ちわびている男に対し裏切っていないと自信を持っていたし、
男からすれば十分奥に挿し込んで襞を嬲ってたように思えたから寝盗ったと。
それぞれ満足げな顔をしながら右左に別れていったんです。
長瀬は一度はこのビルの隠し部屋を疑い、例の事務員に聞いてみたんですが首を横に振るばかりで一向に埒が明きません。
それもそのはず、男と女がアソコを根元まで食い込ませ合いそれでいて自分のために魅せ付けてくれ、
女は息が止まるほど苦しがって悶えていて可哀想に思ったからでした。
不倫中のカップルを守ってやろうと事務員が気を使ってくれたからでした。
この時の証拠集めは、逃げ場のない場所に追い込んだまでは良かったんですが、事務員の裏切りにあい残念ながら失敗に終わりました。