観音崎に 母の血が騒ぐとき
海底に没すまでのわずかの時間に
美代は確かに、あの日の母を見た
幼いころ母を追って観音崎まで来た。あの時の母を。
遊び疲れて家の近くまで帰って来たとき
裏口を抜け、意を決したような表情の母が何処かに出かけるところだった
美代は思わず母を呼び続けながら後を追っていた。
母は、家を抜け出した時から
まるで何かに取り憑かれたように、一心不乱に先を急いでいて
我が子美代の呼びかけに、一向に振り向こうともしなかった。
そのうちまるで、美代の遊び場所でも母と用事で出かける場所でもない
海岸の方向に母は向かって道を脇に反れ先を急いでいて、幼い美代の足では
母の姿は遠のくばかりだった。
野の小路から海岸の岩場の小路へ抜け、足元もおぼつかないほどの荒れ地を抜けるとやがて道は無くなった・・・。
美代は懸命に母を追ったが、やがて見失った。
それが、今思えば確かに観音崎の方向だったように思えた。
観音崎とはもともと、海の安全と大漁を祈願し恵比寿を岬に祭ったもので、
穢れを払うため一般の人間は立ち入り禁止区域となっていて、行き来は海からと決まっていた
年一回 大漁祭りの日にだけ選ばれたものが船に乗ってここに来る。
祠はささやかなものだが確かにある。
何かの折に、どうしてもというときのために村人は時々陸路を整備し通ったが
時代の波や、人手不足からだんだん廃れ、今は陸路で向かうものなどいないし、その道を知る者もいなくなった。
その陸路を、母はまるで狂ったように突き進んでいた。
そうしてとうとう、先行く母の姿を美代は見失ってしまっていた。
時刻は、もうそこまで夕暮れが迫っていた。
引き返そうにも来た道は定かでない、第一このまま母を置いてか帰る気持ちになれなかった。
母がいるとすれば、もうこの海岸の岩場の向こうしかない。
岩だらけの海岸線を、時には海に落ちそうになりながら岩から岩に飛び移り
行き止まりになると岩をよじ登って地面にへばりつくように生えたブッシュの中を
傷だらけになりながら這って進んだ。
ようやく一つの岬の先端に出て、さらにその先の岬が見えたとき、
その岬の岩場の陰から突然母が半狂乱になりながら走り出てきた。
後ろから数人の囃し立てる屈強な男たちに追われながら。
母の危険を知って、思わず叫び声をあげそうになってよく見ると
母は男たちに追われていたのではなく、男たちを誘うようにして
岩から岩に飛び移りながら移動しているところだった。
やがて母は、男たちに追いつかれ 母の衣服が次々と剥ぎ取られていった。
男たちもなぜか、着ていた衣服を脱ぎ捨て母に抱きつき始めていた。
後ろから男が覆いかぶさると、目の前に立つ男の雄々しくなったものを
母は愛しげに口に含んでしごきたてて、その母を別の男が脇から手を伸ばし
乳房を弄んで、その肌に顔を近づけ吸うようなそぶりを見せていた。
目の前で縺れ合う母と男たち
やがて、美代の目の前で母に向かって男たちは次々に後ろと言わず前と言わずあらゆる方向から挑みかかり・・
今になって思えば今夜美代が船上で受けた、あの狂喜の交合・乱交が始まっていた。
母が、自宅から狂ったように岬に向かって走りだした訳は
もはや抑えきれなくなった疼きで惑乱する母に向かって甘い言葉で囁きかけた
この男たちによって岬に慰みものとして誘い出されたようだと気が付いた。
村の男たちにとって沸き立つような若さを発散させるなにものも この村にはない
そのため、時に彼らの母親が彼らを慰めなどし、ようやっと抑えることが
代々できていたが、近親相姦によって座敷牢に入れなければならない狂った子供もうまれた。
母はその、行き場のない若者たちの慰みに選ばれ、邪魔の入らない岬に呼び出されていた。
ひとりの男と交合を済ますと次の男が母に挑みかかり交合が始まる。
こうして延々と交合が続き、疲れ切って立ち上がれなくなった母を置いて
男たちは乗ってきた船で、沖合に向かって去っていった。
母は、美代や家族のためにこの岬に向かって狂ったように走ったわけではなかった。
男が欲しく、疼きが止められず 誘う男の口車に乗って
道なき道を、まるで獣のように男を求め海岸線に、岩場から岩場に飛び移りながら
観音崎を目指していたんだと、今、命が消えようとするこの時になってわかった。
呪われた母の血、ようやく美代は その母と同じように男に抱かれることで
己の中にある、燃えたぎる血を鎮めることができたんだと知った。
恨みもなかった、思い残すことも もうない。
そう思った時、岬のずっと向こうに母が立ち、美代に向かって
手招きしていくれている姿が見えたような気がし、母の胸に飛び込もうとして意識が遠のいた。
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