琢磨のために雷雨とはいえ昼日中 暖簾を下ろし店じまいする女店主
「こんなことぐらいで遠慮なさらないで、お客様なら当然のことだから」
目を潤ませ妖艶な表情を見せた。
琢磨は戸惑った。客とはいっても毎日店主を拝みに来ているだけで、並べてある品物に全く関心がないどころか手に取ったこともない。
「気になさらなくていいんですよ」
店主はうつむき加減にクスリと笑った。琢磨は思い余って白状した。
「こんな客は迷惑なんじゃ・・・今日だって向かいの物陰からあなたを覗き見してて・・・」
「えっ そうだったの? あらどうしましょう・・・ ちょっと待ってね。こんな天気だから暖簾下ろして店じまいしてきますから」
言葉とは裏腹に店主はちっとも驚いた風はなかった。
すっと立ち上がるといそいそと店じまいに掛かってくれ、店の明かりも消してくれた。
そうしておいて琢磨を通した部屋に戻ると更にお茶を継ぎ足し、琢磨の前に置こうとした。
琢磨はそれを受け取るつもりが緊張のあまり店主の手に直に触れてしまってお茶が畳にこぼれた。
「すみません」
琢磨はあわてて着ていた服の袖で拭い取ろうとしたが、これがきっかけでお互いの距離が一気に縮まってしまっていた。
店主はあわてる様子も見せず袂にあったハンカチで琢磨の袖の濡れたところを抑えるように拭いてくれていた。
琢磨は思い切って店主の手首をつかみ僅か引き寄せてみた。自然な風に装ったつもりだった。
「待って」
店主が甘えた声で制してきた。どうみても琢磨の意図は十分理解している風だった。
「待てない!」
店主は琢磨をあやすように首を横に振って制し「私のこと、まだ何も知らないうちにこんなことしたらダメでしょう?」
店主の中にかすかな怯えともとれる表情が一瞬よぎった。それでも琢磨は店主の手を強く握ったまま離さなかった。
口では拒絶しても店主は琢磨に対し贖う態度を示さなかった。
その証拠に握っていた腕から力が抜け、いつのまにか琢磨の懐に抱かれている。
琢磨は思い切って店主を引き寄せると何の抵抗もなく店主は琢磨の膝の上に崩れ落ちた。 続く
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tag : 店じまい
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