廃村に漂う黒い影 禎一の死
反面、美香の情報は露木が人妻を使った試験に合格してからというものプツリと途絶えた。
捜査が進んで参考人招致、或いは国会での証人喚問にまで漕ぎ着けたとしても、肝心の誘拐・凌辱と人身売買に関し証言が取れなければ苦労も水の泡となる。露木は焦った。
これまでに得た美香に関する情報を分析すると、一般的な凌辱を受けてはいるものの比較的大切に扱われているようだったが、情報が途絶える直前に得た噂では、快楽の極致をある官僚に与えるため薬が用いられると聞き及んでいた。
これがもし本当なら美香は遠からず精神に異常をきたす。証人として証言台に立つ前に廃人にされてしまう。
もはや一刻の猶予も許されないと感じた露木は、独断で捜査に走り始めた。
元々の始まりが足羽寛治の女癖の悪さにあった。
足羽家が所有する土地や建物の権利書を奪って姿を消した貞子の足取りを追えば、或いは美香以外の何かを得ることができるかもしれないと嗅ぎまわった。
散々探し、行き着いたのが元次席検事が現職だったころ住んでいた屋敷近くに秘密の隠れ家があるという情報を得た。
古ぼけた、もう使われなくなって何年もたつような貸事務所風のビル、その一室だった。
ピッキングで侵入した直後に何者かに襲われた。
多勢に無勢、なすすべもなく捕らわれた。
ビルに地下倉庫に監禁された。
廃村で捕らわれたときのように僅かの水とひとかけらのパン、それにインスタントのスープが日に一度届けられる。
それ以外の時間は物音一つしない暗黒の闇の中で過ごさなければならなかった。
徐々に体力が奪われた。
筋骨隆々だった身体は栄養不足で悲鳴を上げた。
何より苦しかったのは湧き起こる妄想だった。無音の闇が露木を苦しめた。
その闇から、何の前触れもなく解放された。
救ってくれたのは廃村で露木を真っ先に捉えた中津真一だった。
実は中津真一も父や母の真実を知るためにこの事務所の周辺を探っていた。露木が捕らわれたとき、たまたま事務所の隣室に外壁をよじ登り窓をこじ開け侵入し様子をうかがっているときだったという。
地下室の露木の体力が限界にきて、安心し切った見張り員が女と酒を求め場を離れた。
その隙に真一は地下室に潜り込み、露木を救い出すことに成功した。
アジトに露木を連れ込み介護してくれた。真一の話によると、最初に露木たちが村に現れたとき、真一は先に乗り込んできた伊集院の手先として働かされ、身動きできなかったといった。
露木たちもまた、村を破壊しようとする一派かと疑ったから拉致したといった。
この活動の最中に癌に侵された足羽寛治は過去について何も告げず死んだ。葬儀はひっそりと身内だけで行われた。
かつて、周辺の村々でその名を知らぬものなど無いと言われた資産家の淋しい死だった。49日に列席した真一は主となった正人の妹で他家に嫁いだ晴美の口から、夜逃げした貞子と父寛治がしでかした悪事を聞かされた。
死ぬ間際になって寛治は枕元にいる女が我が子晴美とは知らず譫言を言った。それが真一の母、頼子を寝取ったときの話だった。
中津家の屋敷は広い。家の周囲をずらりと生垣が囲っていて外部から中の様子は覗えないが、唯一覗えるとすれば裏山に登って、その中腹から見れば家の裏側にある若夫婦の寝室だけは池越しに覗き見ることができる。
その日の朝早く、村落に機械音が響き渡った。中津禎一が農地を耕すため、いち早く買い入れ春の田を耕し始めた耕運機の音だった。
足羽寛治は憎々しげにこの音に聞き入った。足羽家には金がある。だが寛治には耕運機を扱うほどの技量はない。扱えるのは金と女だけだった。
当時の耕運の主流は牛だった。新型耕耘機とは比べようもない。悔しくて仕方なかった。禎一が田を耕す様子を覗き見ようと中津家の裏山に登った。
ふと、中津家に目をやると奥の部屋で妻の頼子が生まれたばかりの民子に乳を含ませていた。世間にぬかっては病弱と偽ってはいたが、寛治の目には眩しいほどの白く豊かな乳房に映った。
禎一が耕運に夢中になっている間に、これまでになく打ち据えながら寝取ってやろうと野心が湧いた。
寛治は山を下りた。
平然と夫婦の寝室に出向き、民子に乳を含ませている頼子に向かってこう言った。
「しっかり吸わさんと、残ると乳が痛むぞ」
「この子ったら、寝てばかりいて吸わなくて困るんですよ」
「どれ、見せてごらん」
こういったかと思うと、民子が吸っている反対側の乳房に手を伸ばし、揉み始めた。
「うん、だいぶ硬くなっとる。吸わんとのう」言い終わるや否や乳首を舌で転がし、勃ってきたところでおもむろに吸い始めた。
「子供を寝かしつけたら水車小屋に来たらええ、吸うちゃるけんう」
「寛治さんたら・・・ちょっと待っててくれる?」
頬を紅に染め頼子は身を揉んでいる。寛治はしめたと思った。開いて観ないでも頼子は濡れ始めている。寛治の長年の感は外れたことがなかった。
中津家の裏庭にある池に流れ込む水路がある。その水路に沿って小路が上流に続いているて、ものの10メートルも辿ると水路の分岐点があり、一方は中津群落が使う水車小屋に通じていた。
村道と中津家の生垣を挟んだ僅かな土地ながら水車小屋は竹林の中にあった。
寛治は頃合いを見計らって禎一の妻、頼子を水車小屋に誘い出した。
禎一は真面目一方の勤勉家だった。
妻の頼子が二番目の子供、民子を生んだことで妻の身体に負担はかけまいと夫婦生活を遠慮し、それが村で誰よりも早く耕運機を取り入れ工作に精を出す情熱の方に皮肉にも向いた。
だが、病弱に見えて頼子は女の性だけは人一倍強かった。病人のように透き通る柔肌の奥で女の情念だけがゆらゆらととどまることなく燃え盛った。
それを見抜いていたのが寛治で、新婚で嫁いで来た早々、昼間密かに忍んで頼子の元に行って半ば強引に抱き寝取ってみたときの頼子の、吸い付くような襞と終わってなお放すまいとすがりつく肉壺の姿態。根っからの淫乱と知ってそれ以降幾度となく誘いかけ指で嬲りはしたが合意には漕ぎ着けないでいた。
水車小屋なら夫からは見えないが、絡み合う頼子と寛治からは田んぼで汗を流す禎一は良く見えた。このことを頼子の耳元でささやけば、おそらく今の状態なら頼子は興味を示し、男欲しさに寛治の言いつけに従いはすまいか。この、咄嗟の目論見が寛治に幸運を与えた。頼子は心底男根に餓えていた。
夫に見られながら他の男と情を交わす。頼子は燃えた。忍び込んできた頼子に情交を言い含める必要もなかった。乳を鷲掴みにし、陰部に手を挿し込むと、そこはしとどに濡れそぼり窮状を伝えてきた。あとはただ、それを舌先で拭い取り、亀頭をあてがうだけだった。水車の音にかき消されたとはいえ声を限りにして頼子は悶えた。立ったまま後ろから他家の旦那、寛治に挿し込まれ、その様子を夫が見ている。その羞恥に尻を打ち振った。
寛治は後ろから散々弄った後、前向きにさせ片足を持ち上げながら挿し込んだ。憧れていた頼子の恥骨を突き回すことができた。愛する女の腹部に己を押し付けることができた。目の前の、先ほどまで与えていた乳首から、寛治にしてみれば初乳が性興奮のため滴り落ち始めていた。あわてて口に含み強く吸った。甘い母乳は寛治の男根にさらに一層力を与えた。
頼子は狂ったように身悶え何度も何度も逝った。棹は、下腹部は完全に頼子の潤みで泡立つほど湿った。風通しの良い水車小屋の中で淫臭があたり一面に満ち満ちた。
夫の禎一に放置され、男欲しさに狂った。溜りに溜まった澱が、膿が一気に陰部と言わず乳・腋といわず噴き出した。淫水は後から後から湧いてくる。寛治も狂喜してこれをすすった。切っ先は深部を何度も突き上げ襞をこねくり回した。
寛治はしたたかに頼子の膣奥深く放出するとその場を離れようと、一旦は物陰に潜みながら裏道を抜けようとした。
ふと、思い直して禎一から良く見える村道に、禎一が耕運機をこちらに向け耕しながら戻る眼前に時を合わせ、さも意味ありげに水車小屋から飛び出し、そのまま川上の自宅に急ぎ足で向かった。
水車小屋へは、中津家の許しを得ない他の群落のものの出入りを堅く禁じてある。禎一が大工の真似事をし、こしらえた自慢の水車小屋だった。村落に唯一ここにしかない。
その掟を破って意味ありげに水車小屋から飛び出した。しかもその裏手には中津家の夫婦の寝室がある。
禎一は真っ赤になって怒った。耕運中であることも忘れ、寛治が去っていく方向に耕運を急いだ。禎一の命運はそこで尽きた。
耕運機が田のあぜ道を乗り越え、田へ通ずる川べりに沿った耕運機では通ることさえ難しい幅の小路を駆け下り始めた。耕運のための十分なメタルを前部に載せたままにである。一方は家の二階ほどの高さのある崖である。うまく下ったとしてもその先の幅1.5メートルほどの小さな橋に直角にぶち当たる。勢いを考慮に入れれば、どちらに転んでも川に転落する。力ずくで引いた瞬間耕運機の片輪が道の法面に乗り上げ一気に崖に向かって突進した。
進行をレバーを切って止めればよかったものを耕運機大切さから力ずくで引き戻そうとし、ハンドルに煽られた。ハンドルの上に身体ごと乗ってしまった。
崖下の川には畳半分ほどの平たい、頼子のためにと父の定雄が集落の衆を使って据えさせた洗濯足場用の真新しい畳石があった。
禎一の身体が先にその畳石の上に大の字になって落ち、その上に大切に扱ってきた耕運機が降ってきた。胸で受け止める形になってしまっていた。皮肉なことに妻のために用意した畳石の上で、大切に扱ってきた己の女体ではなく耕運機にのしかかられたことになる。
即死だった。禎一の死。川にはその日、延々禎一の血が流れ村落にその悲壮を告げた。
中津家では頼子が集落のものに対しても普段、ろくろく顔出ししなかったことを幸いに、極秘裏に実家に帰され、「禎一はとうに頼子と別れていた」と葬儀列席者には告げ、「ひとり身になった淋しさのあまり鬱になって耕運機に煽られ死んだ」ということにした。
真一が9歳になったときのことだった。田舎のこととて何事も極秘裏に扱われ、成人するまで真相などわかるはずもなかった。少なくとも貞子が寛治と出来、部落を去るまでは。
一家離散した中津家の真一は都会に出たあとは、お決まりの下り坂を一気に下った。
職もなく放浪の果て、生まれ育った廃村に帰れば多少でも食いつなぐだけの何かが残ってはすまいかと帰省し、そこで貞子と寛治の密会を知った。
目的など無い、時間を浪費するだけの日々のはずが、中津家を追い込んだ寛治を懲らしめる目的に費やされるようになっていった。真一は父禎一に似て頭だけは切れた。
中津真一にとって恨むべくは足羽家であり、寛治であって美香ではない。
廃村に迷い込み、任務とはいえ己が拉致して組み敷いた。あの美麗な美香ではないと悟った。
それ以上に、あのとき己を包んで扱きあげ、身を揉んで責めに応えてくれた塞の神様の美香こそ助けるべき対象だと、真から思った。命と引き換えでも悔いはないとさえ思った。
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2018-07-07 : twitter 補足 この村で言う夜這いとは
- LetsgoChika
美香は控えの女に組み伏せられていた。控えの女の指や舌がヌメヌメと美香の肌を這いずりまわり、陰部には身動きできないように逞しいローターが唸りを上げ食い込んでいる。女の弱点を知り尽くした責めだったが、控えの女のそれは陰湿なものがあった。
07-06 14:57その塞の神の安寧を願うため、村の女たちは小石を持ち寄り奉納し、その前で陰部を開帳し神を安らかしめ子孫繁栄を願った。塞の神(さいのかみ)の献上とは神々しい女陰を捧げるという意味である。
07-06 14:57夜這いを災難の源、悪鬼と称し、これが押し寄せるのを防ぐため、さいのかみには威嚇を示す男根が祭られることが多かった。
07-06 14:56
この村で言う夜這いとは男が行為をけしかけるが、最終的にはけしかけられ欲情した女のほうから誘うのがルールのようになっていた。
隣村の男たちは女が欲しくなったからといって押しかけ、無理やり開くというのは言語道断で、これがため自警団を組織したり境界に男根を祭ったりした。
今回の物語の中で唯一美香は無理やり犯された想定になっているが、読み進まれるうちに「美香が男根を欲しがってたんじゃ?」と思われる方もいらっしゃると思います。女の方から誘うというのは語弊があると言う方、いや逆だという方・・・
ですが、
始まってしまうと相互協力し昇りつめ・・・男女の仲とは欲望が絡み合ってしまえば所詮その程度かもしれません。
今後の展開では、美香が何処までその欲望を抑え込めるのかが焦点になりそうです。
欲望と言えば・・・ これは余談なんですが、
蟲学生が両親のいない間に仲間を大勢自宅に誘い込んでパーティーと称するものを開いたとしましょう。
性の部分については女の子の方が先に育ちきっていて、男の子が後を追いかける展開なんですが・・・だから本来の意味で誘ってきてるのは女の子の方。それが断然多いそうで、そこから以下の行動に繋がってしまうそうです。
○ 提供された飲み物は得体のしれないものばかり。
○ 騒ぎは明け方近くまで続く。
○ 疲れたものからその場で寝入る。
男女入り乱れての雑魚寝ですね。
入眠しそこね、残った者同士で遠慮がちに、試すように、絡み合いが始まる。
元々集まった真の目的がそうだからこの流れは至極当然です。
そこではもともとカップルだったもの同士じゃなく、場に合わせ手当たり次第に絡み、それを見て雰囲気が募った男女は隣の相手と差別なく絡む。 好奇心の性ですね。
早い話が、たまりにたまった滾りを放つ行為を集団で行い、刺激と官能を高める。
こうして乱交に至るんですが、このグループは乱交と思っておらず、後にカップルになるべく「試し愛」としか思っていない。
気が付けばパーティーに参加していなかったものまで混じって乱交してしまっていたということ。
パーティーを提案した輩は、集めた人の種によってこのような会場設定もできてしまうのが倶楽部です。
一旦快楽の罠にはまると、好みの相手が見ている前で他の人と交わることこそ快楽と思えてくるんですね。
野生の世界ではこのことこそ、つまり極限まで性欲を高めることこそ種の保存に繋がるんですね。
普段はきれいな衣に包まれて見えない。
ところが一皮むけば、そこは陰湿でドロドロした欲情渦巻く世界、それを上手くまとめたのが倶楽部だと思います。
美香と控えの女のプレイについては後ほど物語の中に出てきますのでご期待ください。