「あれえ~?? おかしいなぁ~……確かこの辺なのに……」
手渡された手書きの地図を見ながら、春奈はさっきから何度も同じところを行ったり来たりしていた。 教えてもらった住所は恐らくこの辺りと目星がついたが、肝心の話しに出てきた建物に行き当たらないのだ。 お礼というほどではないが、嵩のある手土産を抱えていて、疲れからその重さが骨身に堪え始めていた。
「ちきしょう、あのめんた、いやに遅せえじゃねえか」
漢も狭い部屋を行ったり来たりしていたが、ふと思い立って流しに踏み台を持ってきて乗り、ズボンを開け棹を取り出し、流水を手に取って洗い始めた。 あらかた洗い終わると、小さな手鏡に顔を映し、身嗜みを整えるべく手に唾を付け眉や頭髪を撫でつけた。
春奈が彼を探そうと思ったのには訳がある。 ひとつは彰の性もあるが、もうひとつは100均を集めるようになってから急に目利きじみたことをやるようになり、雑貨売り場に頻繁に顔を出すようになり、漢はその雑貨商に古の100均商品を持ち込んでは売っていてそれに興味を抱いたのだ。 動物の置物などは今と違い、実に精巧に作られており、とても100均とは思えない出来栄えであり、春奈は一目で気に入り買いあさった。
「そんなに欲しけりゃ、ウチにはもっとあるよ。 一度見に来てんか」
気軽に声をかけてくれ、その日持ってきていた品々を、店には卸さずくれたのだ。
「お宅に伺ってもいいんですか?」
躰の関係を持った既婚漢でさえ、永見宅へはヤリに来ても自分の自宅のある場所は決して教えてくれない。 なのに、何の警戒心も抱かず教えてくれるこの漢は、なんて開けっ広げでいい漢なんだろうと、勝手に思い込んでしまっていた。 お土産にしても、夫の武弘が会社から頂いてきたもので、賞味期限が過ぎてるかもしれないから捨てようと思っていた矢先の品物だ。
(これで鯛が釣れたらお笑い種ね)
ほくそ笑んだところまでは良かったが、果たして果たして…もうかれこれ1時間近くその重たい荷物を抱え同じようなところをぐるぐる回らされていたのだ。 春奈が散々歩き回ってる間に漢は、春奈を自分のモノにするための準備を黙々と進めていた。 例えば、どういった手順で押し倒すか、レクチャーを行いつつ勃起してしまう棹を、なだめすかすかのように扱き上げていた。
「あ~あ、仕方ない……大損だけど、この際だから、また例の手を使うかぁ…」
春奈はここに来るまでに電車やバスを使うのが面倒でタクシーを使った。 細やかなことを言うと料金がかさむので大方この辺りというところでタクシーを降りた。 今度は明確な住所を告げ、そこまで乗せてもらうことにした。 ワンメーターと知った運ちゃんは、わざと遠回りし2メーター分走らせ、春奈がタクシーを呼び止めた、丁度その裏側の道から呼び止めた方向に向かって路地に乗り入れ、ある古ぼけたマンションの前で止まった。 防犯システムなど、ほど遠い建物の前だった。
「なあ~んだぁ……ここだったのかぁ~」
ぶつくさ言いながら、春奈はエレベーターに乗り最寄りの階に上がっていった。 都内とはいえ、まさか未だにこんなオンボロマンションに人が住んでいようとは、思わなかったからだ。 空き部屋も相当あるようで、ホールから奥まった部屋までの間に誰ひとり出会わない。 嫌な予感がしたが、ここまで来た以上と思い直し、訊いていた部屋のインターホンを押した。
「やあ! いらっしゃい」
「その節はどうも。 今日はあの折のお礼にやってきました」
店で会った時と違い、いやにこざっぱりした格好で出てきた漢に礼を述べ、手土産を差し出した。
「今家に誰もいないんですよ。 良かったらどうぞ」
「ご家族の方に、ご迷惑をお掛けしたくありませんのでこちらで……」
彰とも、亭主ともご無沙汰が続き、心のどこかにアバンチュールを意識しつつ訪っていたので、引き留めてほしいと願いつつも礼を言って帰りかける春奈を漢は、家に誰もいないんだから構わないと、繰り返し繰り返し言い張るものだから、疲れていたこともあって部屋に通った。
「どうぞ」
漢は、武弘なら決してやらない、来客へのスリッパの提供も、手慣れた仕草で行ってくれた。
(ふ~ん……店で見た感じとは、ずいぶん違うんだ……それとも、私だけ特別なのかなぁ……)
アバンチュールの件はすっかり忘れ、趣味仲間は身分を越えて気が合う。 自分たちも、そういった間柄になれたのかなと、なんの警戒心も抱かず後ろについて奥に通った。 部屋も、汚らしい格好で100均を売りに来ていた時に感じた、浮浪者が住むような状態ではなく、意外と小奇麗に片付けられ、掃除も行き届いていた。
「楽にして、今お茶入れるから」
「お構いなく」
春奈は窓から見える街の景色をぼんやり眺めていた。 玄関から廊下に一歩足を踏み入れた瞬間、そこここに例の100均の置物が置いてあるのが目に入った。 通された部屋から眺める外の景色は、たまたまこの部屋が比較的上の階だったから良かったものの、隣の建物の屋上が辛うじて見える程度にビル群が立ち並んでいて、見えるものと言えば壁壁壁だ。 その点で言うと、永見家も格式高いとはいえ坪数が少なく隣との境界に樹木が生い茂っており、窓の外数メートル先はここと同じく壁のようなもの。
(…このお家、女の気配がしなかったのは、この環境に堪え切れなくなり、奥さん出ていったあとだったんだ……)
心の糧にとコツコツ買いためた、奥さんがかつて大切にしていて、家を出るとき残していったものを、邪魔だから処分する。 当然のことだが、あまりにも境遇が似ていて、つい身につまされた。
春奈が想いにふけっているその隙に漢は、キッチンを抜け玄関に回り、ドアロックに内側からでも開かないよう細工をして戻って来ていた。
「ここ、分かりにくかったでしょう。 でも、もう覚えられたと思いますので、次から遠慮なくお越しください。 ところで、コーヒーかお茶か、どちらにします?」
「そうですね……いい運動になりました。 あっ、いや、ただの方向音痴だっただけですよ。 約束の時間に遅れてごめんなさい。…じゃお言葉に甘えてコーヒーをお願いします」
インスタントのコーヒーが出てくると思いきや、サイホンの用意をし始めた漢。
(…ふ~ん、ナリと違って我が家の役立たずと違い、意外とマメなんだぁ~……)
春奈は別の意味で、良いところを見つけたと大喜びした。 武弘と、まさかの事態に至った時は昼間だけでも、どうせ奥様がいないんだし逃げ込めそうな気がしたからだ。
「コーヒー、薄くないですか?」
「いいえ、とっても美味しいです。 ところで、廊下や部屋にいっぱい置いてある置物は奥様のご趣味なんですか?」
昼間潜り込むにしても、彼の妻の存在だけははっきりしておきたかった。 その、如何にも女のひがみっぽい言いぐさが気に障ったのだろう、長い静寂が辺りを包んだ。
「あのっ、私これで失礼します」
あまりの息苦しさに、バッグを持って立ち上がる春奈。
「…ああ……もう、行かれますか」
「早く帰らないと、学校を終わって子供が返って来るものですから……」
甥っ子の彰はこの頃、夕方近くならないと帰ってこない。 ここに漢を訪ねる決心がついたのも、彰と躰の関係が疎遠になってしまったからだが、追いすがるような漢の視線を振り切って帰る以上理由としてはそれしか思いつかなかった。
「昼間はこの家に、ずっといらっしゃるんですか?」
後ろ髪を引かれる思いで廊下を、玄関に向かいつつ問うと、「何もすることがないものだから」 という寂しさに耐え兼ねた男の本音と思える答えが返って来た。 笑って引き返そうと思ったが、惨めすぎて後ろを振り向く気にもなれず、玄関ドアを開けようとした。 が、何故だかびくともしない。
「…あれえ~……ウチ、へんなことしたかなぁ~……ドアが……」
やっと振り返る理由が見つかり、愁いを込めた目で彼に視線を送ると
「…壊れたのかな……」
思いつめたような眼で見つめ、ここぞとばかりに春奈との距離を詰める漢。
「…こんなになってまで気を使うなんて……あなたは素晴らしい人だ……」
ドアを開けてくっるかと思いきや、春奈を包み込むように躰の前後に腕を回してきた。 心なしか声が震えていた。
「…困ります……ドアを開けてください」
相手の気持ちを悟り、俯く春奈を抱きかかえるようにして漢は数度ドアをガチャガチャとやっていたが、やがてドア側に躰をめり込ませ、通せんぼをした。 息が荒かった。
春奈は躰を固くした。 抱きすくめ、唇を奪われそうな気がしたからだ。 それは一瞬の出来事だった。 怯んで後ずさりする春奈の手首をつかむと、そのまま奥の部屋に引っ張り込んだのだ。
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