睡眠時間はわずかでしたが、『眠い』という実感は全くありませんでした。
昨夜惠との2回目が終わった頃、正直私は「
夜明けは来ないで欲しい」と心から願っていました。
それほどに惠とのひとときが楽しすぎて、離れたくなかったのです。
「この可愛い人とずっといっしょにいたい」と思いました。
でもそんな夢のような願望は当然叶うはずもなく、
夜明けは駆け足でやってきました。
残されたわずかな時間を惜しむように、私は惠を
愛することに没頭しました。
惠は
人妻です。彼女には待つ人がいます。
かりそめにも惠が私のことを愛してくれて、この先ふたりが交際を始めたとしても、結局惠を苦しめることになるだけです。
もしかしたら、ふたりの出会いは神様が仕組んだ運命の悪戯だったのかも知れません。
その日の朝、私は別れの寂しさを胸の奥に隠して惠を愛しました。
「せっかくめぐり合えた素晴らしい人だけど、こうして愛することが出来るのはこれが最初で、そして最後なんだ」と……
わずか一夜共にしただけなのに、これほど深く愛してしまうとは……
私が生きてきた人生の中で、惠は最高の女性だったと思っています。今でも……
彼女がどう感じたかは分かりませんが、少なくとも私にとっては心も身体もすべてぴったりフィットした人でした。
10年が経った今でもそんな思いは全く変わっていません。
別れを惜しむ気持ちが、惠にも通じたのでしょうか。
いいえ、惠自身も寂しかったからでしょうか。
彼女は昨夜よりもいっそう激しく、いっそう壮絶に燃えていました。
正常位にはじまり、
バック、
松葉くずしを経て、
騎乗位へ移行した頃は、すでに最高潮に達していました。
惠は、私の腹部にジンジンと響くほど、激しく、狂おしく、私の上で舞いました。
「あああ~~~っ、裕太はん!すごっ!ああん!すごぅ、ええわ!!」
時折、
上半身を前屈させてくるので、タイミングよく唇を奪いました。
(ちゅっ、ちゅっ、ちゅちゅっ~……)
「うっ、うっ、め、惠、君は最高だよ~」
「裕太はん、うちも裕太はんのこと、すごぅ好きになってしまいましたわ。あぁん、どないしょう……」
「惠……」
本来ならば飛び上がるほど嬉しい言葉なのでしょうが、まもなく別離を迎えるふたりにとっては、どこか物悲しいい響きに溢れていました。
そして
愛の小夜曲は惠の絶頂を告げる嬌声とともに
終焉が訪れました。
◇
部屋で朝食を済ませた後、ふたりは帰り支度を始めました。
帰り支度とは言っても旅行のように大きな鞄があるわけではなく、着の身着のままで飛び込んだ訳ですから準備はすぐに終わりました。
部屋を退出する直前、昨日の仲居が挨拶にやって来ました。
仲居の顔をまともに見るのが何故か恥ずかしくて、私は終始伏し目がちにしていました。
「この度はご利用誠にありがとうございました。また別の季節の宝塚へもぜひごいっしょにお越しくださいませ。またのお越しを心よりお待ち申し上げております」
「ああ、どうもありがとう」
「お気をつけて」
「おおきにぃ、ありがとさんどしたぁ」
表まで見送ってくれた仲居たちに惠が別れを告げている頃、私はクルマのエンジンを始動させました。
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