和子が村を嫌うわけ 女はすなわち利権争いの道具だった
爺様が薬のせいで眠っている間、何もすることがない和子は爺様に教わった道を気ままに散歩した。
奥まった村では休耕田を活用し野菜を育てていた。
主に機械が入らない小さな耕地だ。
そんな中に、一旦育ち始めると比較的手のかからない、つまり草取りの必要ないカボチャの類は良く作られていた。
育ち過ぎたかぼちゃのツルは畑を飛び出し、道に這い出る。
そうならないよう、畑の持ち主は事あるごとにツルを丁寧に畑の中央へ向け捲り込む。
その日は雨上がりに強い風が吹き、何処の畑でも伸びに伸びたツルが道にはみ出していた。
和子が散歩に出かけた先の畑でもツルは元気に伸びて道の行く手を阻むようはみ出している。
散歩する和子の後ろから付近の農婦らしい女がその脇を通りかかり、はみ出したツルの先端に付けた実ったばかりの小さなカボチャを、当たりに視線を飛ばしたかと思うと、それと気づかれないよう実の下の方を蹴飛ばした。
蹴飛ばし具合が強かったのか、カボチャは茎が折れて実はあらぬ方向を向いてしまった。
一旦傷がついたかぼちゃの実は良品として売れない。
畑の持ち主を、カボチャを恨み蹴飛ばしたことは、よそ者の和子でさえ見ていてわかった。
普段は何気ない挨拶の中にも笑顔を絶やさないように見える良心の塊のような村人の、本心を垣間見たような気がして寒気がし、その場を急いで立ち去った。
数日後、気が滅入るような行いのあった道を迂回するように散歩していた和子は、荒地の窪みで争うような人影を見て立ち止まった。
ふたりは何故か、萱の生い茂った草むらの向こう側で争っている。
物陰に身を潜めながら近寄ってみると、組み伏せられているのはあの時の農婦だった。
ということは、組み伏せているのは畑の持ち主に違いなかった。
畑の持ち主は爺様によると、この辺りでも相当裕福な土地持ちらしかった。
組み伏せられている農婦はあの時見た貧農に違いなかった。
「俺はあの時近くの田んぼで雑草を抜いてたんだ」
「あんなとこからちゃんと見えたんか?」
「ああ、見えたとも。お前がカボチャ蹴飛ばすのをな」
「なにお、このクソ親父が!」
組み伏せられた農婦は懸命に押さえ込まれた肩口の手をどけようともがいた。
そうはさせまいと男が力むうちに農婦の胸が肌蹴はじめた。
そう豊かではないが、真っ白い乳房が露わになった。
「何すっだや!」
いきり立った農婦が押さえ込む地主の股間を膝でしたたかに蹴り上げていた。
「うお・・・」
悶絶したはずみで地主は、農婦の耳元に顔を寄せ、覆いかぶさる形になってしまった。
華奢な農婦に立派なガタイの地主が押し返せるわけはなかった。
女の耳元で呻き始めた唇が、次第に首筋にかかった頃には金的の痛みも治まりつつあるとみえ、次第に妙な雰囲気に変わっていった。
男女が縺れ合う諍いである。
「あっ、なにを・・・」
押さえ込んでいた手が農婦の乳房を捉えていた。
回復した男の腰が、男の大事な金的を蹴りあげたすまなさに委縮する女の腰を割って深くめり込んでいた。
「ああ・・・待って・・ここじゃ・・」
事は次第に絡みに変わっていった。
服を身に着けたままの農婦の下半身めがけ、男の股間が遮二無二押し付けられた。
金的蹴りで女への思いやりとか遠慮の縛りが消え、待ち望んだ女へこの機会を利用して貫いてやるという想いだけが残ったからである。
和子の場合であってもそうだが、人妻であればなおのこと、絡みが始まると時間とともに、そのどちらが責めてどちらがそれに応じているのか見当もつかなくなる。
そしてその想いがあっさりと通じた。
「あん、あああ・・・もう・・・」
荒地の中の情交は、最初こそ男が女を組み敷いて詫びを入れさせていた。
ところが揉み合っているうちに女の様子が微妙に変わり疼きが見て取れるようになり首筋や乳房への責めだけで逝きはじめ、本気になって男に絡みついていった。
長いふたりだけが感じあえる愛撫に身を揉み始めた人妻が耐え切れなくなってついに蠢き始めていた。
力任せに迫る男の下半身を手探りでどうにか脱がせ、自らの下腹部を難儀して衣服を脱ぎ晒すと、先ほどまで自らを弄り続けた男根を摘まんで擦りあげ、雄々しくなったところで芯部にあてがった。
そうしておいて、深く挿し込めるよう太腿を割ると身体を九の字に曲げ、両足を高く掲げたあと、腰に回して引き寄せた。
「早く!!ちょうだい」
許しを得た男の勃起が勢いをつけ深くめり込むのが見えた。
ゆっくりとした捏ね回しが始まった。
「あああっ、いい・・・」
地の底を這うような燃えたぎる喘ぎだった。
懸命に頭上に衣服をかぶせ、唇を重ね声が漏れないように工夫する男の男根をあられもない女の腰が弄っていた。
「○○子、こうしてほしかったのか? こうか?」
男は幾度も挿し込み角度と深さを変え、襞を亀頭でまさぐっていた。
「あん、もう・・・わかってたでしょ? ○○さん、奥さんとどっちがいいの? わたしのこと好き? ああ・・・だからもっと強く・・・あん、そこ・・」
抑圧された柵を逃れ、高く繁った萱に隠れ潜み一時の快楽に溺れる男女の姿がそこにあった。
街でなら夫婦は夫婦として、不倫は不倫として個人の分別で大人の恋愛を謳歌できるものを、向こう三軒両隣の見張りが厳しいものだから、こうでもしなければ恋は成就できないのだろう。
それだけに一旦始まった情事は激しく目を覆いたくなるような卑猥に満ちたものがあった。
始まりは全身が異性を屈するべき凶器となって相手に襲いかかっていた。
それが次第に、相手に渡すべき愛を伝える行為に変わり一体化していった。大自然の中でそれぞれに連れ合いを持つ者同士がひとつに溶け合いたくて相手の中を懸命にまさぐりつづけていた。
そして、男は女の中に何かを見つけるたびにそこを責め、女は泣きながら詫び、男を更に深く求めた。
お互いを確かめ合うためか、体位を幾度も変え結合部を確認し合っては燃えている。
地に伏せ、潜むようにして行われていた絡みは、女の欲情が極まりはじめると次第に周囲に晒すがごとく姿勢を高くしていった。
後背位にうつると女は尻を高く掲げ、周囲に結合部を誇らしげに晒した。
女を逝かせきると、次は男の番だった。
女を立たせると立位で絡んだ。
こうなってはもはや萱は何の役にも立たなかった。
遠方からでも結合部はまるみえになっていた。
下方から突き上げられ、ガクガクと尻や下腹部を揺らしながらも女は、必死に男の首根っこに両手を廻ししがみつき、耳元に唇を寄せ煽る言葉を投げかけていた。
少し離れた場所からでも興奮する息遣いまでもが聴き取れた。
待ちわびた情交に女は我を忘れて悶え苦しみ、すがりついて絶叫していた。
始まった当初は和子も物珍しさと行く末を観たくて凝視していたものが、こうなってくると話は別である。
それをまた誰かに見られでもしたら大ごとになると、そっと元の路に這い出そうと振り返った瞬間、突き刺すような視線を感じ一瞬凍りついた。
和子自身が悪いことをしていた訳ではないが、咄嗟に地面に伏せてあたりを見回した。
「だれかに見られている」女だてらに白昼堂々と他人の情事を盗み見していた羞恥に、耳たぶまで赤くなるのがわかった。
男と女が縺れ合う場所から相当離れてはいるが、明らかに農婦の夫とみられる人物が藪に隠れ、草刈りをしているふりをして冷静に成り行きを伺っていたのである。
夫と見られる理由は、振り上げた鎌をあたりかまわず振りおろし、まるで当たり散らすように何かをめくらめっぽう叩き切っていたからだった。
小さなカボチャに始まった事件は、地主と小作の間の支配する側とされる側に立った恋慕を確認し合う情交に、そして寝取られた恨みに変わった。
今、支配される妻側の夫はその恨みを視線に込めて、する側の男を睨みつけていたのである。
和子が間違ってもこの村に住めないと思ったわけがここにあった。
生活と恋愛を切り離して考えるゆとりすらない。
女はすなわち利権争いのカギになっていた。
見た目にはわからない階層が今も息づいていて、表面的には近代的な話し合いと金銭でかたをつけたかに見え、裏ではこっそり情交を結ばせ解決を図っていることへの冷ややかさを知ったからである。
見栄えの良い嫁は、婿にとって自慢である反面 地主の餌食にいつなるとも限らない危うさをはらんでいた。
そのバランスで村は成り立っているといっても過言ではなかったのである。
この地区でも稀代の富豪で通っていた爺様の生家も、爺様の酒と女道楽で往時の資産をほとんど失っていた。
これと思った他家の嫁を力ずくでねじ伏せ、挿し込んできた爺様。
ところが、気分良さの酔いに任せて女が欲しがるものはなんでも投げ与えてきた。
小さな紙切れ一枚で田んぼが数枚消えていったのである。
嫁ぐ家が繁盛するための道具として扱われていた。
それでも皆が爺様を避けて通っていたのは、少しでもうまく立ち回れば、残った財産を、その地盤をかすめ取れるのではないかという目論見からだと婆様が、こっそり教えてくれたことがあった。
最初の頃こそ、婆様の 失ったものが良く言う妬みだと、取り合っても見なかったが、この現実を目の当たりにしたとき、和子にして心底肝が冷えた。
だから爺様の野辺送りがあった日に、和子は人目を忍んで村を抜けようと試みたのである。
ポチッとお願い 知佳
恋愛・結婚ランキング
google51904d4c43421b58.html
BingSiteAuth.xml